お雑煮やさん 粕谷です。
今回は奈良のご当地雑煮を紹介しますが、ちょっとばかり、長い雑談を挟ませていただきますね。
私がお雑煮の面白さを知ったのは、転勤族の家庭に育ち、全国各地の地域地域で異なるお雑煮の存在を身近に感じざるを得ない環境だったからですので、それこそ30年ぐらい前からの話。
「お雑煮」という言葉が出てくると「ふふふふ~知ってる?知ってる?」とお茶目心が出現し、おしゃべりな女の子魂がムクムク湧き上がってきちゃうような、そんな感じ。
でも、面白さをもっと深く追求してみたくなったのは、ずいぶん大人になってからです。
そして、そのきっかけとなったのがこの「奈良のきな粉雑煮」との出会いだったような気がするんです。
私の母は香川出身で、日常の食事の基本のダシは、「昆布いりこダシ」だったんですね。
一般的によくダシとして使われている「かつお昆布ダシ」よりももう少し魚の風味が強いダシが私の食事のベースだったわけです。
そして、私の母という人は、とにかく台所に立つ時間の長い人で、もしかしたら一日の半分以上を台所で細々と料理をしているぐらい「台所の主」だったんです。
そういう母親の娘、というものは両極端になるパターンが多いんじゃないかと思うんですが、私の場合は、実家で暮らしている間はほとんど料理をしたことがない、ご飯を食べることは好きだけど、料理はまったくできない娘となってしまったんです。
だから、料理の面白さを知るようになったのは、30歳を手前に実家を出て一人暮らしを始めてからでした。
そうして自分で作るようになってからは、自然に馴染んできた味のベースとは何か違う、自分のつくる料理の味、それはダシの違いだったんだなぁと気づくようになったんです。
(つまり、基礎料理本を見ながら作る場合は、かつお昆布ダシだったわけです。私は母に料理を習うこともしていなかったので、だしの取り方も料理本頼み。)
ダシの味の違いに強く関心を惹かれるようになったのは、まったく料理が出来ないダメダメな遅いスタートだったからかもしれません。
そんな中で、奈良のきなこ雑煮との出会い、です。
「奈良きなこ雑煮」というのは、
・煮た丸もち
・丸く切った金時ニンジンや雑煮大根
・まぁるいサトイモ
・四角い豆腐
が入った白みそ仕立ての雑煮なんですね。
まず、コレって味噌汁じゃない?と初め感じました。
お雑煮なんて言っても、お豆腐が入ってると「ザ・味噌汁」じゃないの!と。
白みそ仕立てではあるけれど、何だか日々のご飯に添えられた味噌汁みたいな感覚。
しかも、ダシが「昆布ダシ」だけで、白みそ仕立てと言っても、何というかとってもサッパリしている。
私の実家の日常のダシは、先ほども書いた通り、「いりこ+昆布ダシ」なので、動物性の魚のコクがしっかり出ているダシなんですね。
だから、味噌汁感覚としても、より一層サッパリした感じがしたのかもしれません。
でも、コレだけじゃないのが「奈良のきなこ雑煮」。
この白みそ仕立てなのにサッパリした雑煮の汁椀に添えられたもの・・・それは「きな粉」!
つまり、雑煮に入っている餅をわざわざ取り出して、『安倍川もち』にして食べてくださいな!ということなんですね。
たぶんお餅をいくつか食べることを前提にして、そのまま汁と一緒に餅を食べるもよし、
サッパリしている雑煮なので、ちょっと食べ飽きたら「餅を取り出して安倍川もちにして」食べなさいなってことなのか、と。
へぇ~~と驚いたのはもちろん、すごく合理的だなぁ、とも思いました。
このサッパリした雑煮ならば、体にすーっと入りますし、安倍川もちにして食べるとアクセントにもなる。しっかり食べた感がある。
ちなみに、何故きな粉を添えるようになったか、の由来として、「きな粉には悪霊を追い払う願いが込められている」とか、「『豊作祈願』を表す黄色なんだ」とか、「海のない奈良のたんぱく源として」「腹持ちがよくなる」など色んな説があるようです。
他にも、食材ひとつひとつにも意味があります。
丸く輪切りにされた金時人参や雑煮大根は、「家族円満」を意味し、四角い豆腐は「蔵が建つ」を意味しているとかいないとか(笑)
奈良の地域独特の雑煮の食べ方で、すごくユニーク!
合わせて、ダシのさっぱり具合と、きな粉を添えて安倍川にして満足感が出る感じの妙に合理的な雰囲気に、私は夢中になってしまったわけです。
しっかり色んな地域のお雑煮を調べてみたい!と雑煮への興味が一気に高まってしまったきっかけを作ったのは、この「奈良のきな粉雑煮」だったのです(*^_^*)
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